メガネ置きボローニャ留学日記

イタリアのボローニャに留学している、メガネ大学生の日記です。

口頭試験

メガネ置きです。

 

私はこれまで、日本の大学で、筆記の試験しか受けたことがありませんでした。

 

正直に言うと、日本語による筆記試験は、多少の知識だけを身に付け、あとはそれらしい文章を書くことで、どうにか乗り越えることができていました。

 

しかし、ボローニャ大学で私を待っていたのは、そんな生易しい勉強法が全く通用しない、口頭による試験でした。

 

今回は、私が初めて体験した、ボローニャ大学での口頭試験についてお話しします。

 

 

注目の的

留学前から、イタリアの大学では口頭試験が一般的だという話は聞いていましたが、具体的にどのようなテストが行われるのかについてはよく知らず、今回身をもって学ぶことができました。

 

私は「イタリア映画史」という講義を受けていたのですが、この講義の期末試験が、イタリア映画史の知識全般に関する、イタリア語での口頭試験でした。

 

試験のチャンスは、11月、12月、1月に1回ずつの計3回あり、たとえ落ちたとしても次の機会で再挑戦できるシステムだったため、私は全講義が終わった直後に行われた、11月の試験に申し込みました。

 

試験当日、会場となる教室に案内され、人生初の口頭試験が始まりました。

 

かなり大きめの教室に椅子がずらりと並べられており、試験を受ける学生は、自分の名前を呼ばれるまでそこに座って待機します。

 

名前を呼ばれたら、教室前方にいる教授の前に座り、そのまま試験に移ります。

 

驚いたのは、壁もなしに教室前方でそのまま試験を行うため、その様子が座って待っている学生たちからまる見え、まる聞こえだというところでした。

 

当然ながら会場はしんと静まり返っており、口頭試験を行う教授と学生のやり取りが、小さな声でも待機エリアまで聞こえてきます。

 

みんなどのような質問が出されるのか気になっているので、試験を行なっている学生は、言ってみれば会場中の注目の的になっていました。

 

私はというと、特に試験に対する準備もしていなかったため、その回はなんの爪痕を残すこともできず撃沈しました。

 

ただ、なんとなく口頭試験の感覚をつかめたような気がしたため、次の回で合格点まで達することができるよう、1ヶ月間の入念な試験勉強を始めました。

 

 

知識×語学力

イタリア人学生たちは、この口頭試験において、単なる知識の暗記だけではなく、自分なりの独創的な考え方を表現することが求められるとのことでした。

 

しかし、1ヶ月間の勉強だけでそのレベルにまで達するのはどう考えても不可能だったので、私はとにかく基礎的な知識を頭に叩き込み、その知識を表現できるだけの最低限のイタリア語の語彙を暗記、あとはいくつか例文を作ってそれらを繰り返し練習することで、口頭試験に備えることにしました。

 

口頭試験の問題は、たとえば「『カビリア』という映画について知っていることはありますか?」や、「パゾリーニの作品について話してください」など基本的に大雑把で、知識を答えるだけでも一応の解答になるものが多かったため、最低限の基礎知識のみを武器に戦い、合格最低ラインに滑り込もうという作戦でした。

 

しかし、この最低レベルの勉強ですら私にとってはハードルの高いものでした。

 

映画関連の専門的な語彙を覚えたうえで、イタリア語の文章を組み立てながら、頭の中の知識を口に出して表現するのは想像以上に難しく、結局試験の当日になっても、完璧に準備を済ませることはできませんでした。

 

いくら知識を暗記したところで、それを口頭で伝えられるだけの語学力がないと全く意味がなくなってしまうため、この2つの要素をいかにうまくつなぎ合わせることができるかが、今回の口頭試験のキモでした。

 

そして、悪魔のような1ヶ月が去り、ついに12月の試験日がやって来ました。

 

前回は、試験が始まって割とすぐに名前を呼ばれたのですが、今回はErasmusの学生たちが優先的に呼ばれていったので、昼休憩を挟んで午後まで待たなければなりませんでした。

 

11月に一度経験したということもあって、みんなの前で試験を受けることに対する緊張はありませんでしたが、これまでの1ヶ月間の勉強を無駄にできないというプレッシャーが重くのしかかり、正直1回目よりも試験が怖かったです。

 

結果は、合格点ギリギリの点数を、なんとかお情けでいただくことができました。

 

試験の最中2回ほど頭が真っ白になったのですが、それでも合格できていたので、心から安心しました。

 

口頭試験を終えた今、少しばかり知識を頭に入れてあとは本番にうまいこと誤魔化すという、緩い方法で突破できていた日本の筆記試験は、一体なんだったのだろうという心境です。

 

試験勉強はかなり辛いものでしたが、その分やはりこちらの口頭試験の方が、身に付く知識が質・量ともにはるかに上だと思います。

 

人生で一度は経験してみたかった海外の大学での口頭試験は、決して簡単なものではありませんでしたが、私の人生において、大きな糧になってくれるのではないかと思います。